先週に私が日米協議の合意に関してXにポストした内容の一部が報道で取り上げられたことから、「Xは見ることができないので、こちらにも投稿して欲しい」旨のご要望をいただきましたので、重複する内容ですが、纏めさせていただきますね。
日本時間の7月23日に、米国の関税措置に関する日米協議が合意に至ったとのニュースが飛び込んできました。
大手メディアの報道でも政府与党内でも「大成功」との空気感でした。
それは、「25%だった自動車・自動車部品関税が15%とされたこと」「8月1日以降は25%と思われた相互関税なるものが15%とされたこと」によるものだったと思います。
しかし、同日中(7月23日)に外務省から合意の内容を伺い、心配性の私は、今後の日本経済が直面するのであろう困難や経済安全保障上の不安で頭が一杯になりました。
交渉の殆どの期間は通常国会の会期中でしたから、閣僚としての国会答弁や政府の会議などの激務をこなしながら何度も渡米して懸命に厳しい交渉に臨まれた赤澤大臣はじめ関係省庁の官僚の皆様のご尽力には、深く敬意を表させて頂いています。
赤澤大臣のご奮闘には頭が下がりましたし、立派だったと思います。
その上で、幾つかの懸念点と日本政府が取るべき対策について思うところを、この後、順次、書かせて頂きます。
第1に、自動車の関税率は、25%から15%に下がったとは言え、今春までは2.5%でしたから、結果的には2.5%⇒15%に上がったわけです。
WTO協定では、米国が協定加盟国からの輸入品に課せる協定税率(譲許税率)は、乗用車は2.5%です。ワイパーやシートベルトなども2.5%です。
これを15%にする米国の対応は、明らかな協定違反であり、GATT第2条にも違反しています。
今は、円安によるバッファーのお陰で、欧州など他国の乗用車に比べると、高品質の日本車は米国市場における価格競争力を保てると思います。
しかし、今後、円高に振れた場合には、厳しい環境に直面する可能性が否めません。
日本国内の約550万人の雇用、製造業の約27%の設備投資、約30%の研究開発投資、約15%の納税額が自動車関連産業によるものだと聞いています。
日本国内の雇用を守る為にも、次世代に技術革新に取り組む場を残す為にも、自動車関連産業を守り抜く必要があります。
私達が自動車購入時に支払う税金は、消費税と環境性能割です。
春にお招きを頂いたネット番組でも申し上げましたが、例えば2年間は環境性能割を凍結しては如何でしょうか。
買い替え時期を迎えつつある自動車ユーザーが2年以内に自動車を購入しようと考える環境を作り、皆で国内の自動車関連産業を応援するなど、日本の基幹産業を守り抜くべきだと考えています。
地方財源への影響を心配するお声もありますが、法人税の33.1%は地方交付税の財源です。
自動車関連企業が廃業する事による損失も勘案すると、今は国内の企業立地力強化を応援する政策を支持したいと思います。
第2に、珍しい貿易用語、「相互関税」なるものです。
日本から米国に輸出する全ての品目に、15%の関税が課されるのだとか。
例えば牛肉は、既に26.4%の関税率で15%超ですから変更無しですが、15%未満の品目については、15%に引き上げられます。
特に対米輸出が多い「織物」は、7.5%⇒15%に。
同じく対米輸出が多い「光ファイバー」も、6.7%⇒15%に。
実に多くの産業に、影響は及ぶと思います。
もともと日本に強みのある産業への支援も強化するとともに、米国市場以外への販路開拓にも力を入れていかなくてはなりません。
2016年から2018年にかけて当時の安倍晋三総理が主導されたFOIP、QUAD、CPTPP、日EU経済連携協定など(それぞれ目的は違うものの)、様々なネットワークを活かして、「強い経済外交」を展開するべき時です。
第3に、日本企業による米国への投資を通じて、経済安全保障上重要な9分野等について、強靭なサプライチェーンを米国内に構築するという合意についてです。
日本は、その実現に向け、「政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資・融資・融資保障を提供する事を可能にする」とされています。
5500億ドルの投資は、「JBIC(国際協力銀行)による出資・融資」「NEXI(日本貿易保険)による保証」を活用するとのこと。
果たして、真水の財政負担は生じないのか?
政策系金融機関の業務円滑化の為に、政府が資本強化に必要な措置を講ずる必要が生じるのではないか…と思います。
しかも、出資の際の「日米の利益配分の割合」は1対9だとのこと。
5500億ドルは、約81兆2,156億9,559万7,666円です(Xポスト時)。
巨額のお金を日本の研究開発や内需拡大策に使えば、日本経済は強くなります。米国からは真に必要な物を購入して、米国の貿易赤字減に貢献する事もできます。
元々「投資重視の交渉」が石破内閣の方針でしたから、政府としては目的達成の合意だと思います。
ただ、投資対象分野については経済安全保障上の不安を覚えました。
対米投資対象は、半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI・量子の9分野です。
半導体、医薬品(抗菌性物質製剤)、船舶の部品、航空機の部品、蓄電池、重要鉱物など、日本が「特定重要物資」に指定した物資に関係する分野も含まれます。
対米投資によって米国内に強靭なサプライチェーンを構築するにしても、シーレーンが使用できないなど緊急時に備えて、必ず日本国内でも生産能力を強くしていかなくてはならない分野だと考えます。
第4に、「合意文書」が出ていませんので、何が本当に担保されるのか…ということが私達には分かりません。
日米合意直後のトランプ大統領やラトニック商務長官のSNS投稿を拝見すると、私が外務省から伺った内容よりも更に厳しいものになっています。
米国の関税措置については、トランプ大統領による「大統領令」の発出により、必要な措置がとられるとのことです。
しかし、関税率以外にも合意内容が及んでいますから、真に日本の国益に叶う内容なのか政府で十分に精査した上で、首脳間で合意文書を詰めて頂く必要があると感じます。
いずれにしても、医薬品や半導体の分野別関税が課される可能性もありますし、鉄鋼・アルミ関税も下がっていませんから、今後も日米間で議論は続いていくのだろうと思います。
色々と書きましたが、赤澤大臣をはじめ交渉に携わられた皆様の大変なご苦労には十分に思いを致し、敬意を表させて頂きます。
※以上、先週時点の情報に基づきます。